#17 Gの10
いつになっても消えないものは消えない。
阿部慎之助のオーラは消えないんだよ。
巨人第72代4番打者・阿部慎之助。
10年以上もの間、巨人の核として君臨した男。
全盛期は絵に描いたような強肩強打の捕手。
僕が野球を見始めた頃からずっと活躍している選手は今となっては阿部慎之助ただ1人。
大抵の選手は中堅からベテランに差し掛かるあたりで打てなくなる。いや、オーラがなくなるのだ。(元々ない選手もいるが)
オーラというものは実際に形として見えるものではない。けど見ていて感じ取れるもの。僕はそう思っている。
みんなもかつてのイチローを見ていればわかるだろう。
どんなに不調でも、大一番で打ってくれそうな予感・オーラを感じ取れたはず。
2009年のWBCがいい例だ。イチローはその大会、空前の絶不調。準決勝までほぼヒットが打てない。そんな状態でもイチローにはオーラがあった。きっと相手投手からしたら投げづらいオーラが。そして僕らからしたら打ってくれそうなオーラが。イチローは裏切らなかった。決勝で放ったあのセンター前ヒット。どんなに不調でもここでお願い!ってところで打ってくれるのだ。それが持っている男であり、オーラの源だと思っている。
でもそんなイチローでさえ、今季のオープン戦、そして引退試合で打てそうなオーラを感じなかった。今更こんなこと言ってもただの結果論かもしれない。でも心の底から打てると思う期待と、もしかしたら内野安打あるかもしれないという神頼みのような期待は全く違う。最後のイチローに関しては後者の印象を受けた。
でも阿部慎之助は違う。
成績だけ見ればここ5年は出場機会も減り、ホームラン数も減ってきている。今季に限っては16試合を終了した時点で5打数3安打でホームラン0本だ。明らかに試合に出させてもらえていない。
でも彼が打席に立つとどうだろうか。
誰よりもオーラを放っている。
坂本にも丸にも岡本にも出せないオーラを。
どう見ても投手が投げにくそうにしている。
今日だってそう。一発出ればサヨナラの場面で
背番号10番・阿部慎之助がコールされた。
ゆったりとしたあのフォームから繰り出される一振りを想像したら投げにくいのもわかる。
ファンは誰しもが本気でホームランを期待する。決めてくれることを知っているからだ。
結局、阿部は一振りもせずフォアボールをもぎ取った。サヨナラ打を期待してた側からするとガッカリするかもしれない。でもこれぞオーラの真骨頂。
怖くて投手がストライクに投げれない。
その強みが未だ健在なのだ。
阿部にはまだそのオーラが十分にある。
まだまだいけるぞ。
今季で見納めか?
いや、僕らに見せてくれ。
あのオーラから放たれる誰よりも美しい放物線を。